商業登記

会社や法人を設立しようと思えば商業登記は避けてとおれません。
商業登記はどのようなものなのか整理してみましょう。

商業登記に関する要約

商業登記を行なうことで会社や法人は法人格を取得して、法人として活動できるようになります。
商業登記制度があることで自分の会社を公示することができて便利ですが、商号を保護する目的にはあまり役にたちません。
必要な商業登記をしないと過料の制裁がありますので注意が必要です。

商業登記とは

商業登記とは会社や法人、また個人について必要な事項を法務局で登記の記録に載せることをいいます。
商業登記には設立登記、変更登記、解散登記など場面に応じていろいろな登記があります。

商業登記の例

①代表取締役、代表理事等の役員の変更登記

※株式会社は最長10年間まで役員任期を延ばすことができますが、変更登記を懈怠すると裁判所から罰金が来るため注意が必要です。一般社団法人は、任期は2年が原則で、伸長はできません。

②増資登記

株主割り当て、第三者割当、準備金等の資本組み入れ、新株予約権(ストックオプション)など
金銭債権や現物出資等の出資方法もあります。

③商号変更、目的変更登記

会社名や事業内容の変更の場合に登記が必要となります。

④合併、組織変更、会社分割、株式交換登記等

組織再編のため、様々な方法があります。

⑤資本減少登記
⑥取締役会設置、監査役設置、委員会設置等の登記

機関設計をすることができます(コーポレイトガバナンス)

⑦種類株式発行登記

下記の種類があり、様々な株式を発行して、会社運営をすることができます。

  • 剰余金の配当
  • 残余財産の分配
  • 議決権制限株式
  • 譲渡制限株式
  • 取得請求権付株式
  • 取得条項付株式
  • 全部取得条項付株式
  • 拒否権付株式
  • 役員選任付株式
⑧譲渡制限規定に関する登記

株式の譲渡を制限する規定の設ける場合、変更する場合など

⑨本店移転、支店に関する登記

本店所在地の変更、支店の設置、移転、廃止等の場合

⑩株式分割、株式併合登記

株式数の増減をする場合

⑪取締役等役員の責任免除、社外取締役等の登記

取締役等の役員の責任を免除することができる規定、社外取締役の責任を限定する契約時にする手続き

⑫法人設立登記

法人設立には、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社、組合、NPO法人、一般社団法人、一般財団法人等の種類があります

⑬会社解散等、清算結了、清算人に関する登記

会社を解散する場合、解散した会社を清算する場合、解散時の清算人に関する手続きの場合、解散した会社を継続する場合

会社や法人の登記

会社や法人を設立すると必ず会社や法人の登記が必要です。
会社や法人は法務局において設立登記をすることで『法人格』を取得します。
法人格とは法律が認めた『人』としての資格をいいます。
人(『自然人』)は生まれることで当然に『権利能力』(権利の主体となる能力のこと)がありますが、法人は設立登記をして初めて権利能力を持つのです。
法人格をもつことで法人として所有権などの名義人になったり、銀行口座をもったりすることが、できるようになります。

会社などの法人は登記事項であるその法人の『事業目的』の範囲内でのみ『行為能力』があります。(行為能力とは、法律行為を有効に行なうことができ、その効果を自分のものとすることができる能力のことをいいます。また、その権利と対応して相応の責任を負うことができる能力があることも表しています。)
このため不動産の売買や金融取引、官公庁の入札などで、取引をはじめるにあたって取引の相手方から法人登記の内容が記載されている法人の『登記事項証明書』を要求されることがあります。
これから行なおうとする取引に該当する事業目的が登記に記録されていないと取引が行えません。

また会社の名前(商号)や本店の住所、公告方法、役員や会社の株式、社債など会社の重要な事項が登記事項とされています。
この登記されている事項は『登記事項証明書』を取得することで確認でき,登記事項証明書は最寄りの法務局で誰でも取得できます。また郵便での請求も可能です。

個人の登記

個人の場合でも屋号や商号を登記可能。

個人でも思い入れのある屋号や商号を登記することが可能です。
また営業に関して支配人を置いている場合はその旨を登記記録に載せることも可能です。

未成年者の営業の登記

未成年者が自分の名前で商行為をすることを業として行うとき、店舗その他類似施設で物品販売業を行うとき、鉱業を行うときは登記をしなければなりません。
なお、未成年者がこれらの営業行為を行うときは法定代理人の許可が必要です。

商業登記に必要な書類

商業登記は事実を反映し、虚偽の登記がないものでなければ公示の役にたちません。
そのため公正な申請を担保し、虚偽の登記を防止するために商業登記を申請する際に添付しなければならない書類等が法定されています。
会社の設立や商号の変更、役員の変更など登記する場面がいろいろあり、それらの事由ごとに添付書類は異なります。
それらを全て書き抜くことは膨大な資料となるので、ここでは添付する書類と添付する目的を説明します。

目的具体的な書類等
事実を証明するもの・各種決議をした議事録など
・設立の際の出資金払込証明書
・代理人が登記申請を行う場合の委任状
事実が発生する根拠を証明するもの・取締役会を設置していない会社で代表取締役を選任する機関の定めを証明するために定款を添付する
公正を担保するもの・会社設立の際の定款に公証人の認証が必要とすること
・法人設立の際に所轄庁の許認可があることを証明する書 面
・法人の許認可にかかる規則や定款の変更の場合に許認可 があったことを証明する書面
・役員就任の際に印鑑証明書を添付すること
実在を証明するもの・会社の役員に新たに就任する者の住民票など(印鑑証明 書を提出しなくてよい場合)を提出すること

商業登記の流れ

1.事実の発生

登記事項として記録されていることがらについて変更の事実が発生します。
例えば次のような事項です。
1. 会社の設立準備行為の完了
2. 会社の事業目的や本店変更、役員変更等の決議があること
3. 役員の死亡 

2.必要書類の調整

事実が間違いなく発生したことを証明するために対応する各種の書類を用意します。

1. 会社設立
  定款
  出資の払込証明書
  役員就任承諾書
  印鑑証明書など

2. 各種変更
  変更事項を決議した議事録

3. 役員の死亡
  当該役員の死亡記事のある戸籍謄抄本や死亡届など

3.登記申請

書類が整えば登記申請書を作成し、管轄する法務局に申請を行ないます。
申請は直接法務局の窓口に持参する方法、郵送で申請書および添付書類を提出する方法、オンラインで行なう方法があり、自分の都合が良い方法を選ぶことができます。

4.法務局が書類の審査

申請された書類を法務局が審査をして問題がなければ登記記録に新たに記録します。
申請書類に不備があれば申請者に連絡があるので補正をし、不備を是正する必要があります。
ただちに補正することができない場合には、いったん申請を取り下げて再度申請をした方が良い場合もあります。

5.完了

登記官の審査が終わり登記記録に変更が記録されると登記事項証明書が取得できるようになります。
法務局が受けている登記申請の数が多くなれば審査に時間がかかり登記完了まで数週間必要なときもあります。
法務局のサイトに登記完了の予定日が公表されていますので、登記申請にあたって参考にしてください。

商業登記のメリット

登記事項証明書があれば会社の重要事項を説明できる

会社や法人の登記記録には、活動するうえで重要な事業目的や役員の氏名などが記録されていて、登記事項証明書としてその記録を入手することができます。
この登記事項証明書があればどのような会社であるかを説明できます。

登記記録から会社の実態を把握できる

会社や法人の設立年月日や、破産すれば破産の事実、破産管財人には誰が就任したのかが登記記録に記録されます。
また会社の資本金がいくらあるのか、法人では純資産がいくらあるのか、株式や社債の発行や引受会社などが記録されていて、登記事項証明書を取得することによりその会社の実態を把握することができます。

官庁などが統計に利用

会社や法人が設立されれば税務署に通知がいき税務署はどういった法人があるかを把握できます。
また各種統計を行う際に商業登記があることで一定の資料を集めることができます。

商業登記のデメリット

手間がかかる

登記申請に慣れていないと、書類の準備に手間取ったり、いざ申請しても必要な書類が準備できていないため何度も法務局まで出向いたりと、どうしても手間がかかってしまいます。
住民票が必要なら区役所から取り寄せることが必要ですし、許認可事業であれば予め許認可の手続きを経る必要があります。

費用(登録免許税)がかかる

会社の登記を申請する時に登録免許税を納める必要があります。
設立登記だと株式会社では最低15万円必要ですし、合同会社でも6万円必要です。
商号や本店・目的の変更だと3万円、役員の変更では少なくても1万円必要です。

商号の保護にはあまり役に立たない

現在でも類似商号の使用に制限はありますが、以前と異なり同一の住所でなければ自由に登記することができます。
例えば同じマンションの101号室と202号室に住所を登記してある会社は住所が異なるので、同じ商号を登記できます。
自分が思い入れのある屋号や商号を保護するためには別に『商標登録』の利用を考慮してください。

商業登記の注意点

過料の制裁があります

会社の登記事項に変更があってから2週間以内に登記をしないと過料の制裁があります。
期限内に登記をしないことを『登記懈怠(とうきけたい)』といいます。
会社の商号や本店、目的等は会社の運営に大事な事柄なのであまり懈怠はありませんが役員の住所や氏名の変更、また役員の任期更新にともなう変更は怠りがちです。
役員の任期が切れたのにそのままになっているケースもあります。
この場合は選任自体を怠っているので『選任懈怠』といいます。
過料は代表者個人あてに課せられるので会社の経費になりません。

登記記録を職権で閉鎖されることがあります

一定期間登記事項に変更がない場合は法務局が職権でその会社が解散登記をしたり、さらに登記記録自体を閉鎖したりすることがあります。
会社の登記事項のうち、役員の任期が最長で10年間と法定されているため、どの会社でも少なくとも10年間に一度は役員の更新の登記をしなければなりません。
役員のメンバーが同じでも更新が必要です。
そのため法務局が調査をして10年を越して登記記録に変更がない会社は解散しているものとして(『解散擬制(かいさんぎせい)』)、登記記録に解散した事項を記録します。
また解散後一定期間が経過すればさらに登記記録自体を閉鎖します。

商業登記の申請中は登記事項証明書を取得できません

登記申請を受け付けてから審査が終わるまで一定の期間がかかります。
登記は受け付けた日付で記録しますので、受付から完了までの間に登記事項証明書を発行すると誤った証明書を発行したことになります。
このため登記申請があった後は完了まで登記事項証明書を取得できず登記申請中は登記事項証明書が必要な他の申請や届出ができません。
同じ法務局での手続きである不動産登記の申請や供託においては法人番号を記載または記録することで登記事項証明書を添付せずに省略できることになっていますが、この法人番号での照会も同様に行なうことができないので、登記申請中は手続きが進みません。

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