法人設立

昨今の日本は空前の起業ブームが巻き起こっています。

法人を設立することが昔に比べて容易になってきたうえ、行政も起業を支援するようになってきたため、毎日のように多くの法人が設立されています。

しかし、法人設立の際はメリットとデメリットを比較検討しながらあらゆる要素を勘案してじっくり判断する必要があるでしょう。

結果的にデメリットが大きかった場合は想像もつかなかった経費が発生し、法人設立が失敗に終わってしまうこともあります。

法人設立を成功させるためにもそのメリットとデメリットをここでしっかり把握しておきましょう。

法人設立に関する要約

法人とは人間とまったく別の存在である法律上人格が認められたもののことをいいます。
法人設立とは、そのような法律上の人格を持つ会社を設立することです。

類似するものとしては個人事業主による設立があります。
個人事業主による設立とは、株式会社などの法人を設立せずに自営の事業を行うことです。
法人設立に比べて初期費用がからないのですが、社会的な信用度が低いため、取引や融資を受ける時などに不利になる傾向があります。

法人設立のメリットは、世間からの信用度が高いことなどです。
デメリットは、設立の際も、事業を継続する際も高額な金銭的コストがかかることなどです。
注意点は、定款に営利性、適法性、具体性のある事業目的をあらかじめ記載しておかなければならない点などがあります。

法人設立とは

法人設立の目的と法人の種類について解説します。

法人設立の目的

起業には、個人によるものと法人によるものの2つの方法があります。
法人によるものの場合、会社などが法人格を持つことでひとつの契約主体となり大きな事業を行なうことが可能です。
また、事業のスケールが大きくなったり、人を雇ったりするため責任の範囲も拡大されます。
その反面、個人の責任は限定されてリスクをおさえることができます。

法人設立には煩雑で手間のかかる手続きが必要ですが、そのことにより信頼できる事業であると国から認定されるわけです。
その結果、税金面では税制優遇などを受けることができます。
法人格がなければ株式で資金調達することや、許認されることや、大企業との取引はできません。
法人設立は、リスクをおさえながら大きな仕事へのチャレンジができる大切な道具と言えるでしょう。

法人の種類

法人にはいくつかの種類があり、それぞれ設立手続きも異なります。
日本では株式会社と合同会社が圧倒的に多数です。
ひとつひとつ具体的に解説しましょう。

株式会社

株式会社は日本でもっとも多い会社形態です。
利益をあげることを目的として、株主から資金を集めることができます。
株主から経営を委託された人が取締役となり、会社の価値を上げるために事業を行います。

合同会社(LLC)

合同会社(LLC)は、最近増えてきた会社形態です。
株式会社と比較して設立費用が安いなどのメリットがあります。
美容院や飲食店やクリーニング店などの小規模の事業行う時には合同会社が向いています。

合名会社・合資会社

合名会社は無限責任社員だけの会社であり、出資者の全員が無限責任を負います。
無限責任とは払った株式に関係なく会社の全負債の責任を負うことです。
一方、合資会社は無限責任社員と有限責任社員とで構成されています。

NPO法人

非営利的な法人のことで特定非営利活動促進法により認証されて法人になった団体のことをいいます。

一般社団法人

社団法人の一種であり営利を目的としない非営利法人ですが、必ずしも公益を目的とする事業内容の必要はありません。

社会福祉法人

社会福祉法に基づいて設立された法人をいいます。

法人設立に必要な書類

法人の中でも最も多い株式会社の設立に必要な書類は以下のとおりです。

法務局で登記をする際に提出する書類

1登記申請書 
2登録免許税納付用台紙 
3定款 
4発起人決議書 
5取締役の就任承諾書 
6代表取締役の就任承諾書 
7監査役の就任承諾書 
8取締役の印鑑証明書発行後3カ月以内のもの
9資本金の払込を証明する書類 
10印鑑届出書 
11「登記すべき事項」を保存したCD-RかFD 

税務署に提出する書類

1法人設立届書設立後2カ月以内
2青色申告の承認申請書「設立から3カ月を経過した日」または「最初の事業年度終了の日」のいずれか早いほうの前日まで
3給与支払事務所等の開設届出書給与支払開始から1カ月以内
4源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書特例を受けようとする月の前月末まで

都道府県と市区町村に提出する書類

1法人設立届書多くは設立から2カ月以内(東京23区は事業開始後15日以内)

※東京都の場合は、提出先は都税事務所のみ
※神奈川県の場合は、提出先は所轄税務署のみ

年金事務所に提出する書類(社会保険:一人会社でも加入義務あり)

1健康保険・厚生年金保険 新規適用届 設立後10日以内

その他にも、従業員を雇う場合は労働基準監督署に申請する労災保険の関係書類、公共職業安定所に提出する雇用保険の関係書類があります。

法人設立の流れ

ここでは特に株式会社の設立の流れについて順番に説明します。

1. 基本事項の決定

1-1.商号決定
商号とは会社名のことです。
基本的に自分の好きな会社名にできます。
  ※将来を見据えて、類似商号のチェックをします。
  ※なお会社名に使用できない記号等があるので、事前確認をします。

1-2.印鑑作成
会社の代表印を作成し、印鑑登記手続きの申請書に押印する必要があります。
また、代表印は書類と一緒に届出しなければなりません。
  ※弊所では、印鑑セットの制作代行が可能ですので、お忙しい方には便利です。
  また、印鑑は一度登録すると、廉価な印鑑の場合、印鑑が欠けた場合、
  再登録が必要のため注意が必要です。

1-3.役員報酬額の決定
起業したての会社にとって役員報酬は最大の費用です。
原則経費にできないため、節税できる範囲で役員報酬を決める必要があります。

1-4.資本金額の決定
資本金は対外的に会社の信用力となり、資本金の多い会社は体力があるとみなされます。

2. 定款作成

2-1.事業目的
定款に記載していないことを会社が事業として行うことはできません。
将来行う可能性がある事業は前もっての定款へ記載しておく必要があります。

2-2.商号
会社名のことを商号と言います。
株式会社を設立する際には、商号には株式会社の文字を入れなければなりません。

2-3.本店所在地
定款には最小行政区画までを記載する必要があります。
東京23区については区までの記載でもよいとされています。

2-4.出資される財産の価額またはその最低額
株式会社の設立の際は、株数ではなく出資財産額か出資最低額を記載します。

2-5.発起人の氏名、住所
定款に発起人として設立手続きを実際に行う人の署名が必要です。

2-6.発行可能株式総数
定款に定めていない場合には、会社の成立までに定款を変更して定めておく必要があります。

2-7.定款認証
作成した定款の記載が正しいものであることの証明を、会社の本店所在地を管轄する法務局所属の公証役場 で受けます。

3.資本金の払込み

業種にもよりますが、100万〜1,000万円が目安となります。
資本金が1,000万円を超えると会社設立初年度から消費税が課税されます。

4.登記書類作成

登記申請書、発起人の決定書などの書類を作成します。

5.登記申請

原則として資本金払込後2週間以内に、設立する会社の本店を管轄する法務局に代表
取締役が登記申請をします。

6.登記後の各種手続き

会社設立後の手続きとして印鑑カードを受け取ったり、税務署への届出をしたり、社会保険の申請を行ったりします。

法人設立のメリット

株式会社設立のメリットはどのような点があるのでしょうか。

1.取引先からの信用がある

法人が相手でなければ取引をしないと言う会社が多数存在します。
特に上場企業の場合、法人相手でしか取引をしないのが通常です。

2.銀行からの融資や許認可事業に有利

個人事業よりも法人の方が銀行からの融資が容易です。
また、事業に関係する許認可も受けやすくなります。

3.納税時に「経費」として計上できる項目が多くなる。

法人化することで、社宅や旅費日当などを経費にすることが可能です。

4.責任が限定される

取引先と大きなトラブルを起こし多額の損害を被ったとしても、法人であればその責任範囲を限定できます。

5.個人事業主からの法人化の場合、消費税が免税になる可能性がある

※法人設立時の消費税について
資本金1,000万円未満で設立すれば2期目までは原則として免税。3期目は原則として1期目の課税売上高で判定するが、1期目が1年未満の場合には年換算が必要となります。

①設立1期目の納税義務の判定について

資本金1,000万円以上であれば課税事業者となります。
新設法人が、設立時の資本金が1,000万円以上の法人
課税売上高5億円超の法人が50%超を出資して設立した法人(いわゆる大企業の子会社)のいずれかに該当する場合、
設立2期目までは消費税の納税義務が免除されないこととなっています。
上記のような法人の設立1期目は自動的に消費税の課税事業者となります。

資本金1,000万円未満であれば免税事業者となります。
それでは、設立時の「資本金が1,000万円未満」で、かつ「課税売上高5億円超の法人が50%超を出資して設立した法人」にも該当しない場合はどうでしょうか。
消費税の納税義務は原則、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合に生じます。
「基準期間」とは、法人の場合、前々事業年度(2期前)のこといいます。
「課税売上高」とは、消費税のかかる売上のことをいいます。
設立1期目は基準期間が存在しないため、消費税の免税事業者となります。

②設立2期目の納税義務の判定

資本金1,000万円以上であれば課税事業者となります。
設立2期目についても、「資本金が1,000万円以上」の法人や、「課税売上高5億円超の法人が50%超を出資して設立した法人」
については自動的に消費税の課税事業者となります。
資本金が1,000万円以上かどうかは2期目の事業年度開始日(期首)における資本金の額で判定しますので、
設立時の資本金が1,000万円未満であっても、その後1期目の途中に増資を行って資本金が1,000万円以上になった場合、2期目は課税事業者となります。

資本金1,000万円未満であれば原則として免税事業者となります。
設立2期目の期首における「資本金が1,000万円未満」で、かつ「課税売上高5億円超の法人が50%超を出資して設立した法人」にも該当しない場合には、
1期目と同様に基準期間が存在しませんので、原則として免税事業者となります。

特定期間の課税売上高に注意が必要です。
特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合には、例外として消費税の課税事業者となります。
「特定期間」とは、法人の場合、前事業年度の開始の日から6月の期間をいいます。
前事業年度が丸1年間あれば、シンプルに前期の前半6ヵ月が「特定期間」となりますが、設立1期目のように事業年度が1年に満たない場合には特定期間の判定が複雑となります。
設立1期目が7ヵ月以下であれば、特定期間の課税売上高による判定は不要です。
特定期間の給与支払額で判定することも可
なお、特定期間の課税売上高による消費税の納税義務の判定については、特定期間中の「課税売上高」に代えて、特定期間中の「給与支払額」が1,000万円超かどうかにより判定することも可能です。
たとえば、特定期間の課税売上高が1,200万円、同期間の給与支払額が800万円だった場合、
課税売上高 1,200万円 > 1,000万円 → 課税事業者
給与支払額  800万円 ≦ 1,000万円 → 免税事業者
のどちらかで判定することになります。
勿論、特定期間の課税売上高・給与支払額ともに1,000万円超の場合には、課税事業者となります。

③設立3期目の納税義務の判定

原則は基準期間の課税売上高で判定
設立3期目は基準期間、つまり設立1期目の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかにより消費税の納税義務を判定します。
ただし、注意しなければならないのは、基準期間が1年未満の場合、課税売上高を年換算して判定する必要があるということです。

※年換算の1月未満の端数は1月として計算します。

個人事業主の場合、開業1年目が1年未満であっても課税売上高の年換算は行いませんので、法人と混同しないよう注意が必要です。

特定期間の課税売上高による判定も必要

また、特定期間の課税売上高による判定は3期目以降も継続します。
したがって、設立3期目であれば2期目の前半6ヵ月の課税売上高と給与支払額がともに1,000万円超の場合には、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても課税事業者となります。

法人の場合、設立2期目までは資本金なども納税義務の判定要素となるほか、1年未満の基準期間の課税売上高を年換算する必要があるなど、個人事業主よりも規定が厳しくなります。
なお、起業する場合には、当初2年間は個人事業主として営業し、3年目に課税事業者となるタイミングで会社を設立して法人成りすると、最長4年間は消費税の納税義務を免れることも可能です。

法人設立のデメリット

一方、株式会社設立のデメリットはどのような点でしょうか。

1.会社設立のコストがかかる

会社設立の場合は、登録免許税、登記簿謄本代など最低でも25万円程度かかります。
会社を畳む際にも、解散登記や清算結了登記などのコストが発生します。

2.手続きが煩雑

会社登記申請、代表者印の用意、定款作成、印鑑証明書の取得など開業手続きに関係する作業や手続きが煩雑です。

3.住民税が課税される

最低7万円ほどの住民税を赤字の場合でも支払わなければなりません。
この住民税は、たとえ会社が赤字の場合でも、毎年最低7万円ほどの税金を都道府県や市町村に納めないといけません。

4.社会保険に加入しなければならない

法人化するとその会社に属する役員、従業員は社会保険への加入が必須です。
社会保険とは厚生年金・健康保険の総称で、会社は各従業員の社会保険料の半分を負担しなければなりません。

5.専門家への費用がかかる

法人の場合、いろいろと相談事が多くなります。
登記事項を変更するには司法書士、労務管理は社会保険労務士、税金周りの会計業務は税理士、契約書のリーガルチェックは弁護士といったように各専門家に相談の依頼をしなければなりません。

法人設立の注意点

最後に株式会社設立の注意点について説明します。

定款には営利性、適法性、具体性のある事業目的を記載しなければなりません。
そうしないと資金調達面からも不利になります。
また、事業目的に「前各号に付帯または関連する一切の事業」と付記しておきましょう。
そうすれば、定款を変更することなく新しい業務を始めることができます。

代表者は、できれば2/3以上の議決権を保有しておくようにしましょう。
そうすれば株主総会の特別決議を単独で成立させることができます。
難しい場合には、最低でも株主総会の普通決議を単独で成立させる1/2超の議決権は保有するようにしましょう。

同一住所に同一商号の会社がある場合はその会社名を使ってはいけません。
本店所在地にある法務局で、類似商号がないかを前もって確認しておきましょう。

賃貸物件である自宅を事業所にする場合はオーナーの許可が必要です。
特に事務所等使用不可と契約書に書かれている場合は事業所での使用は不可です。

会社設立前に賃貸で事務所を借りる場合は、個人名義でいったん契約し、法人が設立されたら法人名義に変更しましょう。

将来許認可の取得を考えている場合は、事業所となる場所で許認可がもらえるか事前に確認しておきましょう。
例えばマンションなどで古物商はできません。

役員報酬は税法を勘案しながら決定する必要があります。
会社が支払う法人税や社長個人として支払う所得税を節約できるかは役員報酬をいくらにするかにかかっています。

法人の場合決算期は自由に決められるので、決算月は最適な月を選定しましょう。
決算月をいつにするかで経営をコントロールできます。
売上の上がる月や、下がる月、繁忙月は避けるようにしましょう。