新株予約権

新株予約権は、株式会社(新株予約権については特例有限会社も株式会社として扱われます。)の資金調達、社員や取締役などの役員または会社関係者など(以下「社員ら」)のモチベーションアップ、好まない買収圧力(敵対的買収)への対抗に活用できます。

新株予約権に関する要約

新株予約権のうち社員らに発行するものを特にストックオプションといいます。
ストックオプションは社員らのモチベーションを上げることに役立ち、新株予約権を発行することにより敵対的買収への対抗策としても活用できます。
新株予約権をもつことによって会社の業績があがることにつれて大きな利益を期待できる反面、既存の株主にとって資産減少となるおそれがあります。

新株予約権とは

新株予約権とは、予め決められた金額(行使価格)を支払い、予約権を行使すればその会社の新株を取得できる権利を言います。予約権を行使することができる期間が予め定められています。

新株予約権は社内向けと社外向けの2種類

1. 社内向けの新株予約権

新株予約権発行会社の社員らに対して労働の対価として発行します。これをストックオプションといいます。
例えば、行使価格が500円の新株予約権を与えられたとして、株価が1,500円になった時に新株予約権を行使すれば500円の出資で1,500円の株式を取得できるので1,000円の利益になります。
ただし、ここでの利益は計算上の利益であり株式を実際に売却した時に初めて利益が確定します。1,500円の時に新株予約権を行使し、株式を取得した後2,000円の株価がついた時に売却すればしめて1,500円の利益が確定するのです。
新株予約権が行使できる期間を、税制特例があり有利な期間、例えば10年先に設定することで10年先の利益を目指して新株予約権を与えられた者のモチベーションが上がり会社の業績が伸びることで株価が上昇します。
その結果、社員ら新株予約権を与えられた者と会社の両方に利益が得られます。

新しく起業したベンチャー企業は優秀な人材を確保する必要がありますが、起業したばかりでは優秀な人材を抱えておける潤沢な資金がありません。
そこで、その人が頑張ることで業績があがり、業績次第で大きな利益が期待できるストックオプションが人材確保の有効な手段になります。
また、新株予約権の行使期間を10年後に設定するなど行使期間に制限を設けることで、その間従業員など新株予約権を与えられた者が利益確定するまで退職したり転職したり、人材が流出するのを防ぐことができます。

2. 社外向けの新株予約権

資金調達のために発行

新株予約権は、会社の資金調達の手段としても有用な手段です。
新株予約権を発行するにあたって購入者には新株予約権を購入するための発行価格(オプション料)を支払ってもらいます。
会社は得られたオプション料をそのまま事業資金に回すことができます。
社債や金融機関からの借り入れだと返済する必要がありますが、新株予約権の発行によれば返済義務がない資金を得ることができます。
新株予約権の発行は会社にとって安心安全な資金調達方法になるのです。

敵対的買収への防衛策として発行

過半数の株式を特定の相手に保有されると企業は買収されてしまいます。
そこで安定した友好的な株主に新株予約権を渡しておけば敵対的買収に備えることができます。

新株予約権は公正価格以外に無償発行と有利発行がある

1. 無償発行

会社は無償で新株予約権を株主に対して発行することがあります。
会社が大規模な増資を行なって新株を大量に発行すれば株価は下落します。
この際生じる既存の株主の損失を補てんするために新株予約権を無償で発行します。

2. 有利発行

特定の者に対して、公正ではない特別に有利な価格(無償の場合も含みます。)や条件で発行する場合をいいます。
有利発行は企業買収など何らかの目的をもって行なわれます。

新株予約権に必要な手続き

新株予約権発行のための手続きの一例です。
個別案件により手続きがわかれますので、具体的な手続きについては専門家に事前に相談してください。

手続き事項備考1備考2
財務局・証券取引所への事前相談上場企業のみ
役員報酬決議役員へ付与する場合
募集事項の決定株主総会で決議取締役会で決定できる場合あり
株主総会での特別決議が必要な場合もあり
募集事項の通知・公告
割当契約締結/
引受の申込
割当数決定
株主総会取締役会設置会社であれば取締役会
新株予約権原簿の作成
登記割当日から2週間以内

新株予約権の流れ

上場会社が通常の公正な価格で発行する場合は取締役会の決議によって新株予約権を発行できます。
新株予約権を非公開会社(株式を譲渡するのに取締役会または株主総会の承認など会社の承諾が必要な譲渡制限が定められている会社)が発行する場合や、上場会社であっても有利発行をする場合は株主総会の特別決議で承認を得る必要があります。
このような新株予約権の発行は既存の株主の利益を害するおそれがあるためです。
この場合の手続きの流れは以下のようになります。

  1. 株主総会で新株予約権を発行する理由を説明し特別決議による承認を得ます。
  2. 新株予約権の引受けの申込みを受けて、割り当てる人や数を決定し、決定事項を申込人に通知します。
  3. 発行日に新株予約権原簿を作成します。
  4. 割当日から2週間以内に登記します。

新株予約権のメリット

新株予約権を発行することで、発行する側、投資する側など立場によってそれぞれが享受できるメリットがあります。

会社にとってのメリット

  1. 社員のやる気を引き出せること
    数年後に設定された新株予約権の行使期間に向けて会社の業績がよければよいほど新株予約権権利者にも利益が大きいので社員ら予約権利者のやる気を引き出せます。
  2. 資金調達の手段として活用できること
    金融機関から借り入れたり社債の発行によったりする資金調達には返済義務がありますが株式を発行する場合は返済する必要がありません。
    新株予約権を取得するためのオプション料が受け取れるのでそのまま事業資金として利用できます。
  3. 敵対的買収に対する防衛手段になること
    日本では敵対的買収に対して抵抗するための手段として新株予約権の発行が多く利用されます。
    買収されそうになった時に新株予約権を行使して味方が保有する株式数を増やすことで相手方の株式占有率を下げます。ポイズンピルと呼ばれる買収対抗策として利用できます。

投資家のメリット

  1. 安く株式を購入できること
    新株予約権は権利であり、新株予約権を行使するには行使期間まで待たなくてはいけません。そのため通常の新株発行よりも安い価格で発行されます。
  2. 予約権行使のタイミングを選べること
    新株予約権には予約権を行使できる期間が定められていますが、権利の行使は義務ではありません。行使期間内であれば権利者の好きなタイミングで予約権を行使することができ、自分の利益が確定できるときをねらって予約権を行使できます。
  3. 大きな売却益が期待できること
    上記のように、新株予約権は通常の新株よりも安く購入でき、株価が上昇し最も利益が大きい時に予約権を行使して株式を取得できます。
    さらに株価を見据えて、取得した株式を最も有利なときに売却することで大きな利益をうむことができます。株式を売却するタイミングも投資家が自由に選択でき
    ます。

既存株主のメリット

新株予約権を発行する方法で資金調達をすることにより、会社は金融機関から借り入れをしたり新たに社債を発行したりすることと比べて会社に負債を発生させないのでリスクが少なく、そのため既存株主にとっては安心材料となります。

新株予約権のデメリット

新株予約権のメリットだったはずがデメリットとして作用することもあり、新株予約権は両刃の剣だとも言えます。
状況を見極めて将来を見据えたうえで検討する必要があります。

会社にとってのデメリット

  1. 社員のやる気がなくなるおそれもある
    会社の業績が下がると社員のやる気をなくしまうおそれがあります。会社の努力とは関係なく業績が下がることもあるので将来への見通しが大切です。
  2. 社員が不公平感をもつおそれがある
    新株予約権を与えられる社員と与えられない社員がいれば、与えられない社員に不公平感が生まれます。
    新株予約権を付与する基準を明確にして不公平感を生まないように注意する必要があります。
  3. 人材流出のおそれ
    新株予約権をもつことで人材流出を防ぐ反面、そのことだけに魅力を感じていた社員は新株予約権を行使し利益が確定したら、その会社にとどまる理由がなくなってしまいます。
  4. 株価の下落のおそれ
    新株予約権を行使され発行済みの株式が増えると1株当たりの価値は下落します。
    株価が大幅に下がれば既存株主からの信頼が失われ、また、今後の資金調達が難しくなるおそれがあります。

投資家のデメリット

投資家にとっては発行価格(オプション料)の支払いが余分に必要です。
通常の新株だと新株の対価だけを支払えば良いところが、新株予約権の場合には予約権購入のためにオプション料を支払う必要があります。

既存の株主のデメリット

新株予約権が行使されると発行済み株式総数が増えるため、既存の株式がするので株価が下落し、既存株主の資産が目減りするおそれがあります。

新株予約権の注意点

新株予約権には行使期間が定められていて、例えば10年先に株価が上がっていることで利益が確定する仕組みです。
しかし、10年先に必ずしも株価が上昇しているとはいえないため、株価が下がっていると損になります。

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