任意後見

現在は自分で管理できるけど、不慮の事故などで脳に損傷を受けたり、認知症を発症したりしたら自分の財産の管理や介護の契約などをどうするのかが不安になります。
そのような不安を取り払ってくれるのが任意後見制度です。
任意後見制度とはどういうものなのか、必要な書類、手続きの流れ、メリット、デメリット、注意点などについてこの記事では説明します。

任意後見に関する要約

今後自分の判断能力が失われることに備えて将来の財産分与や身の回りことについて、誰を任意後見人にして、どんなことを支援してもらうのかをあらかじめ自身で決めておくことができるのが任意後見制度です。
類似した制度に法定後見制度があります。
任意後見制度のメリットは認知症にならないうちに本人の希望を契約に定められる点です。
一方、デメリットは認知症が生じた後は契約締結ができないという点になります。
さらに注意点としては介護や食事の世話などの法律行為以外は含まれない点です。

任意後見とは

将来、認知症などによる心身機能の低下で正しい判断ができない場合に、後見人が本人に代わって財産管理や介護や看護などの決定をする制度の方を成年後見制度といいます。
「任意後見人契約」を締結し、本人が「委任者」となり相手方は「任意後見受任者」でとなります。
契約の効力が生じた時点で「任意後見受任者」は「任意後見人」となり、支援業務がスタートするのです。
さらに成年後見人は大きく2種類に分かれます。
1.「法定後見人」
本人の判断能力が認知症の発症などによって危うくなってきた時に家庭裁判所が後見人を選任します。
2.「任意後見人」
こちらは本人が認知症などを発症する前に、みずからの希望に従って最適と思われる後見人を指名することが可能です。

任意後見に必要な書類

以下が任意後見契約の締結の際に必要な書類となります。

必要書類備考
1戸籍謄本または抄本(発行後3カ月以内のもの)自治体・コンビニで入手できます
2住民票(発行後3カ月以内のもの)自治体・コンビニで入手できます
3運転免許証※3か4か5のいずれかがあれば可
4パスポート※3か4か5のいずれかがあれば可
5印鑑登録証明書(発行後3カ月以内のもの)※3か4か5のいずれかがあれば可
6診断書
7財産目録
8不動産の登記簿謄本※法務局で入手できます

任意後見の流れ

任意後見の流れについて見てみましょう。

1.任意後見受任者の選定

任意後見受任者は例えば家族や親戚、友人、知人、さらに弁護士、会計士など問題ありませんし、法人でも大丈夫です。
資格等も必要ありません。
ただし、以下の者は除かれます。

1未成年者
2家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人あるいは補助人
3破産者
4行方のわからない者
5本人に対して訴訟している者および過去に訴訟を行った者とその配偶者・直系血
6不正な行為、著しい不行跡、その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

2.任意後見契約の締結

公正証書役場に出向いて本人および任意後見人受任者が公正証書により任意後見契約を結びます。
本人がなんらかの理由で公証役場に行けない場合は、公証人に自宅まで来てもらうことも可能です。

3.任意後見監督人の申し立て

本人の認知機能があやうく、心もとなくなってきたときは、任意後見人の支援状況をウォッチングする任意後見監督人が必要になります。
任意後見監督人が決まることによって任意後見人による支援は開始となるのです。
任意後見監督人の要望は本人または任意後見受任者、配偶者か四親等内の親族によって可能です。
本人の住所の管轄の家庭裁判所へ申し立てます。
本人以外の人が申し立てをする場合は本人の同意が必要です。

4.任意後見監督人の選任

家庭裁判所は任意後見監督人の選任をします。
そして、家庭裁判所から任意後見人宛に選任された任意後見監督人の通知がされます。
さらに家庭裁判所が法務局にあてて任意後見監督人や支援業務が開始されたことの通知を行ない、法務局はその事実を登記するのです。

5.支援業務の開始

身内などの要請で任意後見監督人が選任されると、そこで支援業務の開始となります。
この段階で任意後見受任者は「任意後見人」となり、本人の不動産、年金、銀行預金などといったものを管理したり、要介護認定の申請および入院の手続き、介護サービス契約をしたりといったことを行うのです。

任意後見のメリット

任意後見制度のメリットとしては下記の2点になります。

何を依頼するのかを、本人が事前に決めておくことができる。

法定後見制度の場合は、認知症があらわれてから締結される契約です。
従って行った結果が必ずしも法定後見人が本人や家族の希望に沿えない場合もあります。 そこで、この先いかなる方法で病気の治療や介護を受けたいのか、自宅を売却したいときはどういった条件をつけたいのかなど本人のさまざまな要望を、任意後見契約の条文に一つ一つ反映できる制度が任意委任契約なのです。

任意後見人を自分で選ぶことができる

自分で後見人を選ぶことは法定後見人のケースでは不可能ですが、任意後見人のケースでは可能です。
法定後見制度では、親戚などに適任だと思われる人がいたとしても、家庭裁判所が必ずしもその人を選ぶとは限らないのです。

任意後見のデメリット

任意後見のデメリットとなる点についても見てみましょう。

本人の判断能力がなくなってからは契約ができない

任意後見契約は、あくまでも本人に判断能力が保たれている間に限って締結できるので、認知症などで深刻な認知障害が発症した場合などは締結できません。

本人が死亡後の財産管理等の依頼はできない

本人の死亡で任意後見契約は終了となります。
そのため、葬儀の準備やお墓の管理をどうするか、家具や生活用品の廃棄を誰に依頼するかなどといったことは個別に「死後事務委任契約」を結ばなければなりません。

任意後見人や任意後見監督人の支援内容をチェックできない

指名した任意後見人が本当に委任者の希望に沿った行動をとるかは見届けることはできません。
本人が信用して選定したにもかかわらず任意後見人が期待通りの働きをしなかったというケースも現実にあります。
本人が認知症となるやいなや任意後見人の都合にいいように契約書の条文を解釈して、財産を私的に流用するという事件が現実に発生しています。
そのための任意後見監督人なのですが、さらに任意後見監督人を管理監督する人は不在ですし、専門機関等のチェックもありません。
任意後見監督人がいるからといって安心できないのです。
その対策として、本当に信頼できる人に任意後見人になってもらうようにしたり、契約締結前に専門機関に相談したり、契約書に必要以上のことが記載されていないかよくチェックしたりするようにしましょう。
また、複数の任意後見人や後見監督人を選定してお互いにチェックさせることも可能です。

任意後見の注意点

最後に任意後見で注意すべき点について確認しておきます。
任意後見制度を利用するにあたっては以下の点に気を付けるようにしましょう。

任意後見人が支援をおこなう内容は財産の管理や介護サービスの契約といった法律行為に限られています。
介護や家事、食事の世話やペットの養育等を依頼したい場合は、別途、準委任契約の締結が必要です。

本人や任意代理人がはるか遠方に暮している場合、本人の判断能力の状況を把握するのが難しくなってきます。
定期的に訪問を行ったり、また本人が高齢者施設に入居している場合は施設との連携を深めたりなどして本人の状況を常に把握できるようにしておかなければなりません。

任意後見人が支援する業務の範囲は明確化されなければなりません。
よって「生活に関するすべてのこと」といった特定できない包括的な委任や白紙委任はできないのです。

任意後見監督人の選任前など任意委任契約が効力を生じる前であれば、随時任意後見契約を終了することができます。
任意後見契約が発効した後であれば、もっともな理由がある場合は家庭裁判所の許可をもらって契約を終了することができます。

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