外国人を雇用する会社にとって、外国人である従業員が永住許可を取得することで在留期間の制限などがなくなるため、安心して長期雇用することができます。
外国人にしても日本で長い間働いていて、そのまま日本に住み続けたいと思うのは自然なことです。
永住許可に関する要約
永住許可を取得することで、在留期間や就労の制限がなくなることは外国人本人、雇用する会社にとって大きなメリットです。
一方、帰化と異なり日本国籍を取得しないため、参政権はなく全て日本人と同等になるわけではありません。
永住許可は取り消されることもありますので、取得前も取得後も日ごろの素行に注意する必要があります。
また永住許可申請は結果がでるまでに長い期間がかかりますので、今もっている在留資格の更新に気をつけておく必要があります。
永住許可とは
永住許可とは、在留資格の一つで、正式には『永住者』という在留資格を言います。
『永住権』を取得すると言ったりもします。
永住許可を得れば、在留期間の制限がなくなり在留資格の更新が不要になります。
ただし、「在留カードの有効期間の更新」は必要です。
これは、在留カード自体の更新のことで運転免許証の更新と同じイメージになります。
永住許可を取得すれば就労が制限されなくなります。
永住許可の他にも就労制限がない在留資格があります。
特別永住者(『特別』がついていますが『永住者』です。)、永住者の配偶者、日本人の配偶者等、定住者には就労制限がありません。
永住許可を取得すると在留期間の制限もなく、就労制限もないため、『帰化』と似ていますが、永住許可は帰化と異なり国籍は従来のまま変わらない点が異なります。
令和元年末の在留外国人は2,933,137人で、そのうち永住者は最も多い793,164人(構成比では27.0%)となっています。
前年と比べて2.8%増えています。
許可基準
詳しい条件などは出入国在留管理庁が次のようなガイドラインを公表していて、以下のような要件を満たすことが求められています。
1. 素行が善良であることが必要です。
2. 独立の生計ができる資産又は技量を有していることが必要です。
3. その人の永住が日本の利益に合致すると認められることが必要です。
4. 原則として10年以上継続して日本に在留していることが必要です。
上記の要件について次のことに注意してください。
・『独立の生計』は世帯単位で判断されます。
働いていない配偶者や子供でも配偶者の収入が充分であれば独立の生計要件を満たすものとされます。
・罰金や懲役などの刑罰を受けていないこと、税金や年金・健康保険料などの滞納や未納がないことが必要です。
・在留期間10年には、在留資格の「技能実習」と「特定技能1号」は除かれます。
これら以外の就労資格又は居住資格によって引き続き5年以上在留していることが必要です。
特例
先のガイドラインには、特例があります。
まず、日本人,永住者又は特別永住者の配偶者又は子である場合には,『善良素行』『独立生計』の要件を満たさなくても良いこととされています。
また、同ガイドラインには在留期間10年についての特例があげられています。
1.日本人、永住者(及び特別永住者)の配偶者の場合には、現実の婚姻生活が3年以上継続していること、かつ引き続き1年以上日本に在留していることで足ります。
その実子等の場合は1年以上日本に継続して在留していることで足ります。
2.「定住者」の在留資格で5年以上継続して日本に在留していることで満たします。
3.難民の認定を受けた人の場合は認定後5年以上継続して日本に在留していることが必要です。
4.外交・社会・経済・文化等の分野において我が国への貢献があると認められる人であれば5年以上日本に在留していることで足ります。
類似の制度
永住許可と類似した制度があるので整理しておきましょう。
帰化
帰化の場合は、永住許可と異なり、国籍が日本になります。
帰化をすれば日本人と全て同じで、社会保障も受けることができ、参政権も与えられます。
帰化の場合は、永住権取得許可と比べて審査が厳しいとされています。
帰化が認められるためには以下の国籍法で定める6つの条件とともに、小学校低学年レベルの日本語能力が必要だとされています。
1.住所
2.日本でも本国でも成人であること
3.素行がよいこと
4.生活に困ることがなく日本で暮らせること
5.重国籍でないこと
6.日本国憲法を遵守すること
特別永住者
特別永住者も在留資格の一つです。
永住許可(ここでは区別のために『一般永住者』と呼びます。)と同じで就労制限がありません。
特別永住者とは、1991年11月1日施行の入管特例法(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法)によって定められた在留資格を持つ外国人のことを言います。
第二次世界大戦中に、日本の占領下で日本国民とされた在日韓国人・朝鮮人・台湾人の人たちが、敗戦後の1952年のサンフランシスコ平和条約で朝鮮半島・台湾などが日本の領土でなくなったことにより、日本国籍を離脱しました。
その在日朝鮮人・韓国人・台湾人とその子らについて、永住を許可しました。
一般永住者と特別永住者との大きな違いは次の2点です。
1.一般永住者も他の在留資格と同じように在留カードを持ちますが、特別永住者の場合は在留カードの代りに『特別永住者証明書』が交付されます。
2.一般永住者の場合は『外国人雇用状況届出』をハローワークに行う必要がありますが、特別永住者の場合は不要です。
定住者
定住者とは、日系人やその人と婚姻した人、また定住者の実子や日本人・永住者の実子などを言います。
定住者の場合は、在留期間に制限があり、在留資格の更新が必要です。
在留期間は6ヵ月、1年、3年、5年があります。
ただし、就労活動についての制限がないので、どのような仕事でもすることができます。
永住許可に必要な書類
永住許可の申請に必要な書類の主な例を表にしました。
在留資格 | 必要書類の例 |
共通 | ・永住許可申請書 ・写真 ・申請人(または申請人を扶養する人)の職業を証明する資料 ・申請人(または申請人を扶養する人)の所得と納税状況を証明する資料 ・申請人(または申請人を扶養する人)の公的年金・公的医療保険料の・納付状況を証明する資料 ・パスポート ・在留カード ・身元保証に関する資料 |
日本人・永住者・特別永住者の配偶者や子供 | ・身分関係を証明する資料 |
定住者・就労・家族滞在 | ・理由書 ・身分関係を証明する資料 |
永住許可の流れ
永住許可申請は次のようなステップを踏んで行ないます。
1.永住許可申請に必要な書類を取り寄せましょう
有効期間に制限がある書類に注意して収集時期を見極めます。
2.永住許可申請書や申請理由書を作成します。
3.入国管理局に申請書を提出します。
提出書類を再度チェックして忘れ物がないようにしましょう。
また結果を知らせてくれるハガキがおいてあるので住所氏名を記入して一緒に窓口に提出してください。
受付には時間がかかると予想されるので余裕をもって行きましょう。
申請書を提出した後に追加書類のお知らせがくることがありますので速やかに対応しましょう。
4.結果のお知らせが届きます。
審査期間はおおむね4ヶ月~1年程度かかります。
5.入国管理局で永住許可の在留カードを受け取り必要な収入印紙(8,000円)を納付します。
6.在留資格が永住者に変更になった後14日以内に市区町村役場で外国人登録事項の変更登録を行ないます。
永住許可のメリット
在留期間に制限がないこと、就労が制限されないことは外国人本人にとっても、雇用する会社にとっても大きなメリットです。
永住許可のデメリット
帰化との比較になりますが、永住許可の場合は、外国籍のままなので外国人登録が必要ですし、出国するときには、再入国の許可が必要になります。
また日本国籍ではないので、参政権もありません。
また、退去強制事由に該当すれば本国に強制送還されるおそれがあります。
永住許可を取得するための審査が厳しいことも難点です。
永住許可の注意点
永住許可が認められるためには、素行が善良であることが必要です。
交通違反や税金の滞納などがあれば許可されないことがあります。
一方でボランティア活動などでの貢献は加点されます。
また、会社の借り上げ住宅や社宅に住み続けていると自立していないとみなされて不利になるおそれがありますし、海外への出張や駐在期間が長くなると不許可になるおそれがあります。
素行などは外国人本人が注意することではありますが、雇用している会社も犯罪へ関わらないように見守り、また勤務状態や日常生活のうえで支援する姿勢が大切です。
在留資格の変更申請中でも現在の在留資格について更新時期がくれば並行して更新許可申請をする必要があることにも注意しておく必要があります。
そのため在留許可期間が1年以上残っているタイミングで永住許可申請を行なうと安心です。