日本での在留資格を得て働いている外国人たちが、日本の治安のよさや、宗教などに制限されることがないこと、海外への渡航や結婚・契約などの個人の自由が保証されていることなどから、日本に帰化して日本国籍を取得したいと希望するケースが増えています。
帰化申請に関する要約
帰化申請は、申請するために膨大な資料を集める必要があり、たくさんの書類の作成が必要で、一定の日本語能力が必要です。
帰化の手続きは大変ですが、在留許可の更新が不要になり、日本人として暮らせるようになることは働く側にとっても雇用する企業にとっても大きなメリットです。
帰化申請とは
帰化申請とは、日本の国籍を取得したい外国人が、日本国籍を取得するための手続きをいいます。
ただし、日本人の父と外国人の母との間で婚姻前に出生した子供が、出生後に父親から認知されていて20歳未満の時に日本の国籍を取得する場合は、帰化手続きによらず、法務大臣に届け出ることによって日本の国籍を取得できます。
母親が日本人の場合は出生により当然に日本の国籍を取得します。
国籍を有することで選挙権をもち、公務員になることができるようになります。
帰化の条件の基本的な事項は以下の7つです。
1.住所
在留資格をもち、引き続き5年以上日本に住んでいることです。
留学の在留資格で日本に滞在している期間はこの滞在期間に含まれません。
会社に勤めている人が帰化申請をしたい場合に、出張などで年間80日~100日以上日本国内に滞在できないビジネスマンの場合は帰化申請をしても許可がおりないおそれがあります。
2.成人であること
日本の成人年齢だけでなく、本国の法律でも成人年齢に達していることが必要です。
帰化申請は家族単位で行ないますので親と同時に帰化申請を行なう場合は年齢要件が緩和されます。
3.素行に問題がないこと
犯罪に関与したことがないことが必要です。
交通違反でも判断材料になります。
税金や年金をきちんと納めていることが必要です。
4.独立して生計がたつこと
自分が仕事をして生活することができていることが必要です。
配偶者の経済力で生活できる場合は許可されます。
5.国籍
日本は二重国籍を認めていないので、帰化すれば元の国籍を失います。
徴兵制などで、国籍離脱を認めていない国があるため注意が必要です。
6.憲法順守
日本の憲法を順守する人であること、反政府活動の経歴がないことが許可条件になっています。
7.日本語能力
日本人の7歳から8歳程度の日本語の読み書きができることが必要です。
面接する法務局の担当者とスムーズに会話ができることが必要ですし、日本語のテストが行われることが多いのである程度の日本語能力を実際にもっている必要があります。
普通許可
一般の外国人が日本国籍を取得したい場合に申請する許可です。
簡易帰化(特別帰化)
普通帰化よりも条件が緩和された許可です。
日本に継続して住んでいる期間が3年に緩和(普通帰化は5年)されます。
日本人の子供、父母が日本で生まれた人、日本人の配偶者等が、簡易帰化を申請できます。
永住許可
帰化とは異なり、外国籍をもったまま、日本に永住する許可を得ることです。
したがって、在留資格の変更の一種であり、外国人の在留期間や在留活動の制限がなくなります。
日本の国籍を有しないため、選挙権や公務員になることができません。
また、犯罪に関与して懲役1年以上の刑が執行された場合や、1年以上日本から離れた場合は永住許可を取り消されるおそれがあります。
帰化申請に必要な書類
帰化申請に必要な書類はとても膨大ですので、帰化申請書以外に代表的な必要書類を例示します。
申請は、入国管理局ではなく住所地を管轄する法務局・地方法務局・国籍事務を取り扱う支局に対して行ないます。
提出する書類は原本とそのコピーを1部提出します。必要であれば原本を還付してもらえますのでコピーを1部余分に準備します。
初めての面接時に準備するもの | ・在留カード ・パスポート ・運転免許証 |
母国から取り寄せるもの | ・戸籍謄本(戸籍制度がある国) ・母国での申請者の身元を証明する書類(出生証明書・婚姻証明書など) |
職場からもらうもの | ・源泉徴収票 ・給料の明細書 |
役所・役場から | ・課税証明書 ・納税証明書 ・身分関係を証明する書類 ・住民票 |
会社の役員や個人事業主の場合 | ・事業の概要書 ・会社の全部事項証明書など ・確定申告書 ・納税証明書 |
本人が作成・手配するもの | ・履歴書 ・親族の概要書 ・生計の概要書 ・帰化の動機を説明する書類 ・宣誓書 ・技能・資格を証明する書類 ・外国語の書類の翻訳 ・年金の納付証明書 |
帰化申請の流れ
帰化申請をするためには、いろいろな書類を役所などから取り寄せる必要があり、法務局に対して申請した後も、法務局が独自に各種の調査を行なうため時間がかかります。
1年またはそれ以上に時間がかかります。
1.法務局に予約・相談
担当者が不在であれば二度手間になりますし、予約をする際に持参書類を確認すれば不要な手間を省くことができます。
2.法務局担当者と相談
予約の際に準備するように指示された書類を持参し、今後の手続きについて法務局の担当者と相談します。
法務局の担当者から帰化申請に必要な書類の一覧表を受け取ります。
過去5年間の日本国内での滞在記録や会話による日本語能力をチェックされます。
法務局によっては日本語能力のテストを行なうこともあります。
3.提出書類の作成・取り寄せ
法務局から受け取った必要書類の一覧表をもとに提出する書類などを集めて帰化申請書の作成をします。
集める書類等は、多くて煩雑ですので、充分な余裕をもってすすめましょう。
納税証明書などは時機をまたげば、もう一度書類を取り直すことになるので計画的に収集していくことが大事です。
4.住所地管轄の法務局(地方法務局・支局)に申請
法務局に対して、帰化申請書と附属書類一式を提出することで審査が始まります。
提出後2ヶ月~4ヶ月くらい後で法務局から面接の日程を確認する電話が入りますので、都合が良い日を指定します。
不足書類があれば追加して準備するように指示があります。
5.担当官と申請人との面接
法務局の担当者から提出をした書類をもとにしていろいろな質問をされます。
家族、仕事、税金のこと、今後日本人としてどのように生活していくかについてなど、多肢にわたります。
面談は本人のみが行なえます。弁護士や行政書士などが面談自体に同席することはできません。
質問されたことについて、本人自身がはっきりと回答できるように事前に準備をしておきましょう。
面接後には法務局による家族や勤務先に電話するなどの身辺調査が行われます。
6.法務大臣(法務省)へ書類送付・審査
面接や提出書類に不備がないことを確認して、地方の法務局から法務省へ書類が送付されて、改めて審査されます。
この審査に半年から1年程度かかります。
この審査中も素行についてはチェックされるので、税金などの滞納をしないこと、軽微であっても交通違反などもしないように、日々の生活に注意が必要です。
7.帰化の許可
帰化が許可された場合はその旨が官報で告示され法務局から本人へ通知されます。
不許可の場合も法務局から本人へ通知されます。
許可されたら市区町村役場で手続きを行ない、戸籍ができたら入国管理局に在留カードを速やか(14日以内)に返却します。
帰化申請のメリット
帰化することによって、日本人と同じ条件、同じ手続きで生活でき、働くことができるようになります。
名前を変えられる
漢字やひらがなの名前が多い日本では、外国人の名前に違和感を覚えられてしまうので、名前を変えられることをメリットに考える外国人は多いです。
本人が希望すれば、そのまま元の名前を使い続けることも可能です。
日本の戸籍をもてる
日本の国籍を取得するので、戸籍がもてるのは当然ですが、戸籍をもつことで『入籍』をすることができます。
在留資格の手続きが不要になる
在留資格の更新手続きは最長でも5年ごとに行わなければならないため、日本に長く住みたい外国人にとって負担になります。
この手間がなくなるメリットは大きく、万一更新できなかった時に退去強制のおそれがなくなります。
日本のパスポートが持てる
ビザ(査証)なしで渡航できる国や地域の数を比較した世界のパスポートランキング2021年版で日本はビザなしで渡航できる国や地域が193と最も多く1位を獲得しています。
自由にどこにでも旅行に行ける、この日本のパスポートの便利さも外国人が帰化するメリットになります。
選挙権を持つことができる
外国人でも日本に住んでいれば税金や保険料の支払いをする義務がありますが、それに対して選挙による意思表示ができません。
帰化することによって、選挙に立候補することも投票をすることもできるようになります。
銀行との取引が簡単になる
外国人であっても日本の銀行と取引をすることはできるものの、手続きが複雑になってしまいますし、借り入れをしたいときも国籍を理由に借入額を減額される場合もあります。
帰化することによって、銀行との取引が容易になります。
帰化申請のデメリット
帰化をするには、時間と手間がとてもかかってしまうのが難点でデメリットといえます。
日本では二重国籍をもつことを許されていないので、帰化をすることで元の国籍を失うことになります。
また、帰化することによって、母国に帰るさいにビザが必要になることがあります。
ただし、日本はビザなし渡航ができる国が多いので実際に問題になることは多くありません。
帰化申請の注意点
許可申請の許可をうけるための注意事項が、いくつかあります。
転職暦
帰化申請にあたって、『安定して継続的に一定額以上の収入』を確保できるかをみています。
転職暦について、その回数、頻度、転職理由によって判断されます。
仕事の内容や職場の人間関係のために転職を繰り返しているような場合は不利になり、専門職のキャリアアップのために転職を繰り返している場合は不利にはなりません。
国民年金の免除申請
国民年金の免除申請をして年金の一部または全額の納付をしていない場合は、生計要件からみて不利に判断されます。
借入
借入があることだけで不利にはなりません。
借入の理由、使途、返済状況、学歴や職歴など、その他の条件を踏まえて総合的に判断されます。
在留特別許可
過去に不法入国や不法滞在をしていた外国人が在留を特別に許可された事例では、そのときの罪状や経緯、家族などの関係性から総合的に判断されます。
一般的には在留特別許可を受けた日から10年を経過しなければ許可されないといわれていますが、これも目安であり、過去の違法行為の悪質性などから判断されることになります。7年程度で受けつけられることもありますし、10年を経過しても受けつけてもらえないこともあります。